畳表は有機質の草を使用していますから条件が整えば、どうしてもカビが生えます。それは生鮮食料品を空気中に放置したままにしておくと、すぐにカビが生えてくる事と原理的に変わりありません。
また畳表は水分を吸収しやすいので、室内が湿気過多になり、不健康な状態になるとカビが生えてきます。
カビは3要素(栄養・湿度・温度)で発生します。この要素のうち1つでも排除出来ればカビの抑制につながります。
湿度70%以上、気温25℃から危険ゾーンです。
特に1年目の青味のあるうちは、い草に栄養が多い状態ですので、梅雨の時期から気温の上がる夏にかけて、次の事を心がけると効果的です。
い草はカビが生えやすいから嫌だ、という声もありますが、同じ条件にあるい草の部屋にカビが生え、化学的な製品にカビが生えなくても、その部屋は湿気にあふれた不健康な状態が存在しています。
い草は、ある面で室内が不健康な空気に包まれたときにカビを発生させることによって、そこに住む人に警告を発してくれているバロメーターのようなものかもしれません。「換気と掃除」をすることで健康的な住宅・部屋につながります。
部屋の換気をして、カビている箇所を乾燥させます。エアコンのドライ運転は効果的です。畳の目に沿って掃除機で吸い取るか、乾いた雑巾でカビを拭き取ります。エタノールなどの消毒剤も効果的です。その後は上記のカビの対策を心がけください。
(時に強い薬品を使われるのか、かえってその部分が変退色してしまう事があるようです。この点は注意したいものです。)
い草は植物です。水などこぼしたらただちに拭き取ってください。特に新しい畳表は部分的な変色の原因になります。
新しい畳表には、時に折り目が目に付くことがあります。地厚な良質品ほど出がちです。この折り目は使っている間に自然に消えます。
(折り目対策は各畳店様により色々あると思います。本間麻綿Wの最高級品(2.8-2.9kg)を多く扱われ、梱包においては通常の折りで、梱包時注意事項で「巻かないように」という店もあります。このような状態で折り目対策はどうされているのか?産地研修においてご紹介したいと思います。)
敷き込んだ当初はい草の葉緑素で青味がありますが、半年から1年もすると飴色に変わります。「青味がなくなる事(葉緑素が分解する事)=品質の劣化」と思われがちですが、退色と畳表の品質はほとんど関係がなく、実入りの良い新芽中心のい草で織った製品は葉緑素が分解しても、草の繊維は長く良い状態で保たれます。ただ品質に応じて一定期間を過ぎますと品質の劣化が始まり、皮向けなどがが発生します。
一般的な敷物としての品質劣化は表面の痛みであるのと同じように、皮向けなどが取替の目安です。写真の最高級品クラスは、使い方にもよりますが、長い年数において皮向けが見られずツヤのある敷物として使えます。
工業製品などは使うほど品質が劣化し、ホコリなどが目の間に詰まって黒くなったり、ベタついたりしますが、天然い草は使うほどにツヤがでて飴色に変わっていき、この変化を楽しむ事ができます。またい草は目の間に詰まって黒くなったり、ベタついたりすることはありません。お手入れをして快適な空間をお楽しみください。