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肥後物産通信9月号「生産者との勉強会報告」

情報交換会の様子
情報交換会の様子

 9月3日(土)は生産者28名の方々と「安心出来る道筋を描く」という趣旨で情報交換会を行いました。

 経糸や肥料など様々な経費が値上がりしている中、我々が取り組めるのはどういった事があるのか、産地全体としての対策、一問屋としての対策等を提案。今回の問題を少しでも乗り越えていけるよう情報共有を行いました。

 

日時:9月3日(土) 16:00〜17:30

場所:肥後物産(株)

内容:

1.情報交換会

◎現在の緊急問題とされている事

  • 肥料などの高騰により、経費が約1反(10a)あたり最低10万円は上がったこと
  • 現在の平均的な生産者の売上は、1反に平均400枚の生産で約80万円/反の売上、い草販売を合わせて95万円/反
  • 経費がこれまでの65万円から75万円、粗利が30(95-65)万円/反から20(95-75)万円/反と減少
  • この状態が続けば、産地がなくなるのは目の前にきていること

◎「正確な現状認識」が成果につながる

 「現状認識」が違っていると、対策は空回りして成果につながらないので、まずどこで国産畳表が売り負けしているのか?全国的な傾向と流通についての現状、また現在の産地対策として実行してきた事とその結果、これからの計画などを報告しました。そして対策は原則に沿って行う事を基本と考えて提案しました。

◎価格を左右するもの

対策の方向性を合わせる
対策の方向性を合わせる
  • まずこの点を合わせて対策にすべきと考えました。
  • 「価格を左右するもの」は「需要と供給」のバランスであり、この事は基本的な原則であり、原則に沿った事を対策にすべきと考えています。
  • 「需要を上げる」事は、「国産が選ばれる」という事であり、いかに「国産が選ばれる」ようにするか。ここを対策として集中すべき思います。
  • 「価格を上げる」という点においては、色々な考えがあるかと思います。これまでも、産地を思う有志の方が価格面で支えて頂くような取り組みを頂き、感謝しております。しかし全体の流通量からすると数%であり生産者の減少に対する対策までには至らなかったように思います。しかし、これはこれで出来るところから進めたいものです。
  • 弊社でも契約の生産者の商品に関しては、、出来る限り生産が続けられるよう対応したいと思います。
販売競争原理
販売競争原理
  • しかし一部の生産者向けの対策ではなく、全生産者の方を対象とした対策が必要に思います。
  • 現在の319戸の方が生産を続けていることで、機械メーカーなどから刈り取り機械や植え付け機械などが供給され、これが一部だけの生産者では、供給されなくなると思います。
  • 現在、生産を続けていらっしゃる方全員が出来る限り続けられるようにする事が、共に生きる道ではないかと思います。
  • 「産地問屋の組合など全体で高く買うような事は出来ないか?」といった案もありますが、組合では需要拡大などでは一致協力して活動しており、現在よくまとまっていますが、一方で、販売においてはお互いにライバルです。市場が縮小する中で、売り負けた店が、次から意図的に高く買い続ける事は現実的でないかと思います。

◎流通の現状認識を合わせる

卸売業の営業利益率
卸売業の営業利益率
  • 経済産業省のホームページをみると、一般的に卸売業の営業利益率(経費を差し引き残った利益)は、中小企業で1,5%となっています。
  • 平均価格からすると営業利益は、この1,5%で35円/枚であり、10万枚扱う店は350万円が利益、20万枚(弊社の場合)で700万円が利益となります。一方で35円高く買えば、営業利益はゼロとなり、70円高く買うと、35円を差し引き-35円となり、10万枚扱う店は-350万円、20万枚の店で-700万円で欠損となります
  • 薄利多売の卸売業の利益率は、製造業の利益率とは違うこと、また生産者側からみたとき、流通の世界では、競争がなく、高く仕入れて高くそのまま売れていくという認識と実際の流通のギャップを情報交換しました。
  • 一方で、一部の生産者の商品はその生産者を支えようとされる有志の畳店様から支えられ、コストアップ分が受け入れられている例もあり「そのように出来ないか?」と思われがちですが、これは一部となっています。
  • これまでも一部を支える取り組みは、産地全体の対策まで至らず、生産者と産地問屋とで需要を高める対策の方向性を合わせる事が出来ればと思い、これまで実行してきた事の報告と提案を行いました。

◎成果を上げるには「集中」

「成果をあげる秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない」とは、ドラッガーの言葉ですが、そう思います。

安心への道筋
安心への道筋

 即効性のある対策が欲しいところですが、産地全体で行う対策は、成功要因の最重要課題に対して「集中」する事かと思います。

 そもそも今年度は供給面では熊本産は15%の作付けが減少しており、中国産も35〜40%の作付け減少となっており、円安で輸入品は割高になっています。

 もし国産需要が15%減れば価格は昨年並みとなりますが、需要がそこまで落ち込まず、正規の熊本産のみが流通すれば、自ずと価格は上がるはずです。更に需要が増える(国産が選ばれる)対策に「集中する」事が出来れば成果につながるはずです。

 

 産地を1つの会社とみると、生産部門、販売部門があり、生産と販売の情報共有が必要であり、売れる会社は、ここがよく共有され方向性が合っているかと思います。成果を上げるためにも、ここが今回の情報交換会の位置付けとして行いました。

自宅に敷くならどっち?
自宅に敷くならどっち?

 対策の集中という事で、産地問屋の組合では、5年前より年に1回ですが、生産者とこの対策について話し合い、その話した対策を実行してきました。現在、予算のほとんどを、Google広告などを活用した情報発信に集中して行っています。

 これは約20年に1回ぐらいの買い物であれば、品質や価格の事がわからず、一般的にネットで検索して買い物をするというスタイルが多いかと思います。その検索したときに組合のサイトが存在して、クリックすると「自宅に敷くならい草の畳表か化学畳表か」のアンケート結果を掲載しています。プロである方のご意見は、消費者が選択する際に大変参考になるかと思います。

 最初は熊本の産地問屋だけで行っていたものが、全国の産地問屋組織まで広がり、産地問屋一体となって「国産が選ばれる」(需要を高める)取り組みを行っています。全国組織の産地問屋の会としては、現在はここに資金を集中しています。

◎即効性のある価格アップについて

 一問屋としての対策を提案しました。

◎「無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ」

国産畳表のお手入れ
国産畳表のお手入れ

 近年は、温暖化の影響もあり、かつての九州地方の天候が関東まで北上しているように思います。そのためか、天然い草のカビ問題が過去より多く発生しており、クレームが発生するという事で、化学表を勧められる店も聞くようになりました。

 これらの対策として、全国組織の産地問屋の会では、カビ対策で成果をあげていらっしゃるいくつかの店の協力を得て、そのノウハウを中心にまとめた「国産畳表のお手入れ冊子」をこれまで6万4千部発行し、対策としてきました。

客のためになるものを売れ
客のためになるものを売れ

 

 このような対策はしたものの十分ではなく、現在のところ、カビ問題で国産需要が減っています。私たちとしては、更なる対策も必要と考え、一問屋での企画ではありますが、施主様に対して、天然い草、化学畳表のそれぞれの長所・短所を説明して、「お客のためになるものを売る」という姿勢のお店の話をぜひ多くの方に聞いて頂き、紹介する事が、国産需要を高め、生産者の現在の緊急課題に対応する事だと考えて、秋の研修会を案内しています。(展示即売会の関係で九州地方、また直接販売のお店が対象となります)

 

 「施主様が求めるもの、好むもの」を販売するのではなく、「客の為になるものを売る」という事は、一見、お客の反発を得て、「売上が減少するのではないか?」と思われがちですが、どのようにされているのか?説明のツールなどはどのようなものを使われているのか?これらのお話は参考になるかと思います。

 現在の産地がかかえる課題に対して、今は対策の「実行」の時と考え、秋の研修会を位置付けています。

2.今年度産い草の評価について (講師:森崎和義 様)

 今年度産のい草は、古芽が抑えられ、品質が良い傾向です。草丈も収量も平年並みであり、自信を持って産地として供給出来る年だと思います。

 勉強会では、今年産い草の1寸抜きサンプルを用意し、今年の草の傾向などについて森崎先生にご説明頂きながら勉強会を行いました。

 以下はアンケート結果です。

◎ アンケート結果

□大いに参考になった 26.9%

□参考になった 69.2%

□どちらともいえない 3%

□あまり参考にならなかった 3%

□参考にならなかった 0%

 

◎コメントとして主なものです

・仕上げ、選別基準など自分の畳表を自信を持ってアピールできる製品を提供できる様にしなければならないと思いました。

・研修会に参加させて頂きありがとうございます。コストアップについては、まず生産者の努力が一番だと思います。

・やはり生産者としては買ってくださるお客様の為を最大に考えるべきだと改めて感じました。良い研修でした。

・厳しい現状なのが分かりやすく説明されてよかった。またこのような機会があったら参加したいと思う。

・広告費をどの様に捻出するのかを考える。個人で何が出来るかをしっかり判断し、実行できる様にする。

・課題などは分かったのですが、それと作業を両立させていくのはなかなか難しそう

・コストUPの件は、全国の畳店さんが考えてほしい問題です。生産者が居なくなってから考えても遅いし、畳店さんも天然い草畳を必要としていると思いますので、早い段階で価格に転嫁してほしいです。

・生産者・問屋の現状認識の確認ができた。一寸抜きで今年度産のい草の事を知る事ができ、今後どういった栽培管理をしていった方がいいのか知る事ができた。

・ネット広告(Google)なども確かに大切だと思いました。仮にTiktokerやYouTuberに案件をしてもらうと若い人の集客ができると思いました。

・ネットの重要性はもっと訴える必要はあると思います。価格を上げる要因は生産側の戦略もある。下がった際に我慢する必要もある。自分で自分の首をしめてる部分もある。

・畳店を交えて情報交換をしてほしい。

・実際に加工する女性向けの研修会もたまにはいいと思う。

・今後とも勉強会・情報交換会の開催をよろしくお願いします。