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肥後物産通信7月号「梅雨時期に窓を閉めるか、開けるか?」

(1)  2020/3/27表替え当日の部屋
(1) 2020/3/27表替え当日の部屋

 梅雨も末期となり、これからカビに注意する時期となりました。

 昨年夏より弊社にて、カビ対策をA4サイズ1枚にまとめる作業を行い、その際に多くの畳店様、材料商様に施主様におけるカビの実情をお聞かせ頂きました。

 そこで感じたことは、多くの店が納品時にお手入れの事を独自に説明されて、「カビのクレームはほぼなくなった」という店がほとんどでした。しかし今月に入り一部地域で、施主様よりカビのクレームが発生しているようですので、少しでも参考になればと思い、先月に引き続きカビをテーマにしました。  

 

 皆様のカビ対策で説明されているポイントはほぼ共通しており、湿度、温度、栄養の3要素がポイントでした。この点は北九州大学の森田教授にも確認頂いた事でした。

 一方で1点、見方が分かれる点がありました。それは「梅雨時期に窓を閉めるか、開けるか?」です。これは家造りで左右する事かもしれませんが、熊本における梅雨時期は「閉めれば暑いしクーラーまでは必要ない」という気候なので、私の家では少数派かもしれませんが梅雨時期でも雨が降り込まない限り、窓は全開です。

(2)  2020/7/13梅雨時期窓全開
(2) 2020/7/13梅雨時期窓全開

 (1)の写真は今年の3月27日に表替えをした時の写真です。それから約4ヶ月経過した梅雨時期の2020年7月13日の写真が(2)です。

  通常は敷き込んで1年目の梅雨時期や梅雨明けの時期にはカビが出やすいものですが、この部屋は梅雨の雨の中、北と西側は窓を開けた状態ですが、まったくカビは発生していません。

 

  今年はいつもの年より梅雨前線が長く停滞し、球磨川流域では大きな被害が出てしまいました。雨が降り続く中で窓を開けた状態での部屋の湿度はかなり高い状態と思いますが、湿度より「空気の淀みを少なく」を優先させた状態といえるかもしれません。洗濯物も、曇の日でも風があれば乾く事と同じ原理で、空気の流れは湿度を飛ばすように思います。

 これは先月の通信6月号でご紹介した屋久島での事例と同じと思います。2020年7月現在、八代ではこの梅雨時期は下の動画の通り連日このような雨が続いています。

2020/7/13 梅雨の雨の中、窓全開でもカビは生えていない
2020/7/13 梅雨の雨の中、窓全開でもカビは生えていない

 ただ過去にこのパターンで例外となる事例がありました。それは平成10年頃までの畳表は着色されている製品が多く、20数年前の表替えの時は、着色製品でカビが発生しました。平成10年以降は無着色となり、この頃よりカビ発生は見られなくなりました。

 無着色に切り替わる平成10年前後は、産地での裁断、梱包の作業時には着色製品と無着色製品のホコリの発生具合は大きく違い、無着色製品はホコリが目に見えて少なかったものです。染土が製品に付着している濃度は大きく違う事を肌で感じた事でしたが、着色製品は敷き込み後も染土の濃度が多く、これがカビが発生しやすい原因の1つかもしれないと推測するものです。

 い草には、そもそも抗菌作用がありますので、染土が薄いものや、無染土のい草にはカビ菌は発生しにくいはずではないかと推測します。

使用した畳表2種類のうち上のランク
使用した畳表2種類のうち上のランク

 今回の事例における環境条件ですが、家は木造、床はわら床、畳表は熊本県産(無着色)の2019年10月に織られたものを約半年寝かせて3月に敷き込んでいます。

「畳表を寝かせてある事はカビ防止の大きな要因である」と言われる畳店様もある事より、熟成させる事はカビ発生を抑える事につながるのは確かであると思います。過去20年ほどの表替えは、ほぼ半年〜1年は寝かせてある製品を使っています。また、この部屋には2種類の生産者とランクの違う製品(29kgと26kg)を敷き込み、色変わりと耐久性も研究中です。使用頻度としては毎日使用しており、掃除はこまめに行っています。

 高気密高断熱の家ではありませんので、この事例の結果は昔ながらの木造建築だけ言える事かもしれませんが、カビ防止のポイントの1つは家の造りに関係なく「空気の淀み」と思います。

 それぞれの家の環境に合わせて、扇風機のタイマー機能やエアコンなどを使って、お部屋の空気を循環させるだけでもカビの抑制になるかもしれません。また皆様のカビ対策事例で参考になる事がありましたら、ぜひ教えてください。

2020/7/4の熊本豪雨
2020/7/4の熊本豪雨